大胆でシンプル
2026年9月14日
時代や国境、ジャンルを超え、数多の芸術作品の題名・テーマとなってきた「生命の樹」。
そうした作品の中で、どれが一番好きかと問われれば、「太陽の塔」の中の「生命の樹」と答えると思います。デザイナーのマキワラです。
存在を知った日から一度は行ってみたいと思っておりました岡本太郎記念館。
けれど気がつけば20年以上経っておりました。
青山にあるので、少し前まで東京で働いていた妹に案内してもらうことも考えておりましたが、美容師と会社員ではなかなか休みが合いません。それでも今回、奇跡的に予定を調整することができ、ようやく夢を叶えることができました。
記念館を訪れてまず感じたのは、「静かだ」ということ。
岡本太郎さんといえば、大胆な色彩や強烈なエネルギーを思い浮かべる人が多いかもしれません。ところが、グラフィックデザイナーの視点で見てみると、色数少なく、シンプルでクール。そして驚くほどスタイリッシュな作品が。
線は迷いなく、形は明快、構成には無駄がないように感じます。
派手に見えるのに、実際にはとても洗練されている。
そのギャップが鮮烈で美しかったです。
そして、館内を見て回るうちに強く感じたのは、「人」の存在。
岡本太郎さんは民族学にも深い造詣を持っておられたことで知られています。作品からは生命の力強さだけでなく、生と死、喜びと不安のような、人間そのものへのまなざしが感じられました。
また、この度の展示は「黒の躍動」をテーマにされており、「鮮やかな色彩の芸術家」というイメージとは違う一面も見ることができました。黒という色は、ともすると重くなりがちです。でも岡本太郎さんの作品では、生命の輪郭や存在感を際立たせる色として機能しているように映りました。
さらに興味深いのは、彼の育った環境。
両親ともに芸術や文化の世界で活躍した人物であり、非常に恵まれた文化環境の中で育った方です。
私自身も、恵まれた環境から生まれる表現にはどこか心動かないこともあるのですが、岡本太郎さんの場合はなんとなく違うような。むしろ既存の価値観や常識を疑い続けるような強烈な意志と、人間への深い関心が作品や名言の中に感じられました。
20数年越しに訪れることができた岡本太郎記念館。
作品を見に行ったつもりでしたが、帰る頃には「なぜ人は表現するのか」「なぜ人は表現に惹かれるのか」「物差しひとつの選り好みは貧しい心のはじまりか」ということを考えていました。
デザインの仕事に携わる者としても、とても刺激と潤いのある一日でした。
